NTTドコモは4月15日にこれまでよりも最大4割安い新料金プラン「ギガホ/ギガライト」を発表しました。6月1日から適用され、契約や利用状況によりますが2~4割程度安くなるとしています。
今回の新料金プランの特徴は端末購入料金と通信料金を分離した「分離プラン」の導入、シンプルさを追求したこと、通信料金が最大4割安く抑えられることでした。しかし、発表直後からネット上で「あまり安くなっていない」との声や、4割安くするための条件が限定的であったりなど不満も聞かれています。
そこで、まず今回発表された新プランの詳細を解説する。さらに、これまでのプランに比べどれほど安いのか、au、ソフトバンクの大手2社がすでに導入している「分離プラン」との違いも解説していきます。
なぜ4割値下げを行うのか
ドコモによると新料金プラン導入によって最大4000億円の顧客還元が行われるため2020年3月期の利益は減少する見込みだとしています。今後、利益が9900億円と見込まれている2019年3月期の営業利益まで戻るには2024年3月期までかかる可能性があるとしています。
4000億円もの利益減少を見込んでまでドコモが値下げに踏み切ったのは「楽天の参入による市場の変化」と「政府の意向」という2つの理由があります。
新料金プラン発表会見でドコモの吉澤社長が語ったように今年10月に楽天が第四のキャリアとして参入することで携帯市場が大きく変化する可能性があります。今後の市場の変化に対応して競争力を強化し、業界のマーケットリーダーになるため、いち早く新料金プランを導入したというわけです。
そしてもう1つの理由が「政府の意向」です。去年の10月に菅官房長官が「日本の携帯料金は他国に比べて高く、4割程度値下げする余地がある」と発言し、それ以降政府からの通信業界全体への値下げ圧力が高まっていました。特にドコモの親会社であるNTTは筆頭株主が政府であるため政府の意向を無視しにくいという事情があります。さらに業界トップのドコモが値下げに踏み切れば他社も追従してくれるという政府の意向もあるでしょう。そのため今回の値下げはこのような政府の意向を汲んだものでもあると言えるわけです。
新料金プランの詳細
今回の新料金プランは「シンプルでおトクな料金プラン」「2つから選ぶわかりやすい料金体系」「家族のおトクをさらに強化」という3つをポイントの掲げ、最大で4割の値下げすることが出来るようになっている。
シンプルさを追求し2つに絞ったプラン
これまでの料金プランは音声通話に関するカケホーダイプラン・カケホーダイライトプラン・シンプルプランという3つの基本プランを選択した後、データ容量に合わせたパケットパックを選ぶとうく構造になっていました。さらにパケットパックは家族用とひとり用に別れたり「月々サポート」「docomo with」の適用などが料金パターンを複雑にし、わかりにくい原因になっていました。
そこで新料金プランでは、端末料金と通信料金を分離する「分離プラン」を導入し端末購入補助の「月々サポート」「docomo with」を廃止。音声通話をオプションとして扱い、データプランを「ギガホ」と「ギガライト」の2つにだけに絞りました。
通話オプションはこれまでの音声通話プランよりも安くなっているのも特徴です。現在のカケホーダイプランにあたる「かけ放題オプション」は2700円から1700円に、カケホーダイライトプランにあたる「5分通話無料オプション」は1700円から700円に、月額980円でかけ放題なしのシンプルプランは新料金プランでは音声オプションなしの0円扱いになっています。
月額6980円で30GBの「ギガホ」
月額6980円で30GBの容量が利用でき、容量超過後もこれまでよりも速い1Mbpsで通信できるのが「ギガホ」の特徴です。現在の30GBプランである「データパックLL」は8000円のため、1000円値引きされています。
30GBという大容量プランはauとソフトバンクも導入していますが、他社は128bpsまで速度が落ちるのに対して、1Mbpsまでしか落ちないのがドコモのアドバンテージになっています。実際1Mbps であればほとんどの通信は問題なく行えるので、実質データ使い放題と言うこともできます。
ライトユーザー向けの「ギガライト」
ライトユーザー向けの、段階制プランが「ギガライト」です。1GB未満で月額2980円。1GB~3GB未満で月額3980円、3GB~5GB未満で3980円。5GBから7GBで月額5980円となっています。現在の4段階制プランである「ベーシックプラン」との違いは、最大容量が20GBから7GBに下がったことです。
ベーシックプランとほとんど料金体系は同じですが、通話オプションが1000円安くなっているので通話オプション込で考えると「ギガライト」のほうが安くなる可能性が高いでしょう。
シェアパックを廃止して、2回線で500円、3回線以上で1000円割引を導入
現在のプランには家族でパケットを分け合える「シェアパック」がり、ファミリー割引が利用できる。しかし、新料金プランではシェアパックは割り算をしないと一人あたりの料金がわかりにくいということから廃止され、新たに回線数に応じた「みんなドコモ割」という割引が導入されました。
みんなドコモ割では、2回線以上契約すると、月額500円、3回線以上の契約で月額1000円の割引が適用されます。ドコモの吉澤社長によると家族3人以上で利用しているドコモユーザーは7割を超えているということなので「みんなドコモ割」の恩恵を受けれる人は多いでしょう。
実際に「みんなドコモ割」を適用すると、ギガホは6980円が5980円に、ギガライトユーザーは2980円が1980円に値下げされます。現在のウルトラデータLLと比較して、割引適用後のギガホは3割程度安くなり、ベーシックシェアパックの1GBと比べると割引適用後の1GB未満のギガライトは4割り程度の値下げになります。このよううな仕組みで最大4割の値下げが実現されているというわけです。
また、現在は月額1000円でのオプションという位置づけながら、キャンペーンという形で実質無料になっているテザリングが完全に無料になることが発表されまいした。理由としてはこれまであったネットワーク設備に対する懸念が、今回無いとわかったためとしています。
2年縛りと違約金は見直されず
このように一部条件付きではあるが、最大4割値下げされることになる新料金プランですが、値下げと同時に期待されていた2年縛りと途中解約した場合に発生する9500円の違約金の見直しは行われませんでした。
「月々サポート」と「docomo with」に変わる端末購入補助はどうなるか?
新料金プランにより現在より通信料金が安くなることは理解できたと思いますが、分離プランの導入により「月々サポート」と「docomo with」が廃止されるため、端末購入補助は適用されなくなります。そのため、頻繁に機種変更をする人は逆に損をする可能性が高いです。
これに対してドコモの吉澤社長は、「端末購入補助は、独立で考える。全く補助がないと、お客さまがお求めにくくなるので、少しでもお求めやすくするアイデアを検討中」とコメントしています。
例年通りであれば、5月の中旬頃に夏モデルのスマートフォン発表会が行われ、そこで端末購入補助に関するさらなる情報が発表される見込みです。
個人ユーザーにはあまりおトクにならない可能性もある
今回の新料金プランで最も恩恵を受けれるのは月間1GB程度利用しているライトユーザーであり、最大4割料金が下がることになります。大容量プランユーザーの場合でも複数人の家族ユーザーであれば2~3割の値下げを受けることができます。
しかし、個人ユーザーは割引が適用されないため、現在の「月々サポート」の契約を継続したほうが料金が安くなる可能性も高いので注意が必要です。
auとソフトバンクが導入済みの「分離プラン」との比較
ドコモのギガホ・ギガライトと同様にライトユーザー向けと大容量のヘビーユーザー向けという2つのプランはauとソフトバンクにも用意しています。auの「auピタットプラン・auフラットプラン」ソフトバンクの「ミニモンスター・ウルトラギガモンスター」です。
ギガホ・ギガライトがauとソフトバンクのプランに対して強みといえる部分はライトユーザー向け(ギガライト)の料金がより安いことと、大容量プラン(ギガホ)で30GBを超過しても1Mbps までしか速度が低下しないことです。auとソフトバンクのプランは129Kbpsまで通信速度が低下します。
ライトユーザ向けを詳しく見ると、1GBの料金は3社とも1980円(割引適用時)と同じです。異なるのは1GB以上の料金設定でauとソフトバンクはそれぞれは2GBで2980円と3980円であるのに対して、ドコモは2980円で3GBの通信が利用できます。さらに5GBで比べると、auは4980円、ソフトバンクは5980円に対してドコモは3980円という料金設定になっています。基本的にau、ソフトバンクより1000〜2000円安い料金で利用できます。
ただ、どの料金も一定の条件を満たして割引きなどを受けた場合のため必ずしもドコモが一番安いとは限らないことには注意が必要です 。
楽天の参入と今後の料金競争のゆくえ
今回のドコモの新料金プランには期待されていたほどの衝撃はなかったという感想を抱いている人も多いのではないでしょうか。最大4割値下げというのはかなり魅力的に見えますが、適用範囲がかなり限定的であったり、端末購入補助が廃止され、個人ユーザーなどは逆に料金が高くなる可能性があるなど必ずしも良い変化であったとは言えないでしょう。
他2社に対してどれほどの驚異になるかも未知数な状況です。今後、すぐにauとソフトバンクが対抗策を打ち出す可能性もありますし、10月の楽天の参入まで待つかもしれません。どちらにしても今年から来年にかけては政府の値下げ圧力に加え、楽天の参入、5Gの開始など通信業界、そしてユーザーにっても大きな変化の年になることは間違いないでしょう。