この記事では、Bluetoothのコーデックについて解説していきます。
ワイヤレスイヤホン選びで、最も大切なものとは何でしょうか。
音質?接続の安定性?デザイン?価格?バッテリー持ち?それともノイキャン性能?…
人それぞれ重要視するポイントは異なると思います。
しかしワイヤレスイヤホン選びで大切にして欲しいポイントとして、「コーデック」が挙げられます。
実際ワイヤレスイヤホンのスペックには、「AAC対応」「Aptx対応」などとコーデックが目立つように明記されていることが多く、「なんとなく重要なもの」と考えていた方は多いかもしれませんね。
それは全くその通りで、Bluetoothのコーデックはワイヤレスイヤホン選びで大切な要素の1つなんです。
そこで今回は、Bluetoothのコーデックとは何かから、コーデックの種類、特徴や違い、ワイヤレスイヤホン選びにおいて大切なことなどを解説していきます。
Bluetoothのコーデックへの理解を深めることで、より自分にピッタリのワイヤレスイヤホンを選べるようになりますよ!
Bluetoothのコーデックとは?
コーデックは音声を圧縮する方法のこと
Bluetoothのコーデックとは、「音声を圧縮する方法」のことです。
Bluetoothを利用してスマホからワイヤレスイヤホンに音声を送信する場合、そのままの状態では送信できません。
なぜなら、データ量が多すぎるから。
有線に比べて無線で送れるデータ量は限られているので、無線のBluetoothで音声データを送信する場合は圧縮してデータ量を削減しなければいけません。
無線のBluetoothで音声を送信できるようにデータを圧縮する方法が、「コーデック」というわけです。
ワイヤレスイヤホンでのコーデックの違いは「圧縮効率」と「遅延」と「音質」
そんなBluetoothのコーデックには様々な種類があるのですが、それぞれの違いは「圧縮効率」と「遅延」と「音質」の3つ。
これがワイヤレスイヤホン選びでコーデックが大切な理由で、どのコーデックに対応しているかによりワイヤレスイヤホンの「遅延」や「音質」に差が出てしまうのです。
もちろん、ワイヤレスイヤホン遅延や音質はコーデックだけで決まるものではありません。
搭載ドライバーやアンテナ設計、再生機器などにも大きく左右されます。
とは言え、より低遅延で高音質なワイヤレスイヤホンを求めるなら、間違いなくコーデックは重要な指標の1つです。
代表的なBluetoothのコーデックは以下の7つがあります。
- SBC
- AAC
- aptX
- aptX HD
- aptX LL
- aptX adaptive
- LDAC
・コーデックの圧縮効率比較(上に行くほど高い圧縮効率)
- aptX LL
- aptX=aptX adaptive
- AAC
- aptX HD
- SBC
- LDAC
「圧縮効率」は音声のデータ量をどれだけ効率的に圧縮し削減できるかを表しており、高ければ高いほどデータ量を削減できます。
なのでより低遅延かつ安定してデータを送ることが可能です。
コーデックの圧縮効率という点では、aptX LL、aptX、aptX adaptiveなどのaptXシリーズが優れており、高音質と低遅延を高次元で両立しています。
・コーデックの遅延比較(上に行くほど低遅延)
- aptX LL
- aptX=aptX adaptive
- AAC
- aptX HD
- SBC
- LDAC
「遅延」はスマホやパソコンからワイヤレスイヤホンへ音声データを送信する際に、どれだけタイムラグなくデータを送ることができるかを表しています。
遅延が少なければ少ないほど、ゲームや動画での音ズレが最小限に抑えられるというわけです。
なので、ゲームをよくプレイする方や動画をよく見る方は、より低遅延のコーデックであるaptX LLかaptX対応のワイヤレスイヤホンを選ぶと良いでしょう。
・コーデックの音質比較(上に行くほど高音質)
- LDAC(ハイレゾ対応)
- aptX adaptive(ハイレゾ対応)
- aptX HD(ハイレゾ対応)
- aptX
- aptX LL=AAC
- SBC
「音質」に関しては搭載されているドライバーや音のチューニング、接続しているスマホ、そもそも好みの問題などもあるため、一概にコーデックだけで決まるものではありません。
しかしできる限り高音質のワイヤレスイヤホンが欲しい場合は、ハイレゾ音源対応のaptX HDかLDACのイヤホンを選ぶようにしましょう。
Bluetoothの各コーデックの種類とそれぞれの特徴
各コーデック特徴・違いをもう少し詳しく見ていきましょう。
SBC【すべてのワイヤレスイヤホンが対応】
SBCは音声コーデックの標準仕様で、すべてのワイヤレスイヤホンやヘッドホンが対応しているBluetoothコーデックです。
なので特に対応コーデックの表記がなくても、SBCには間違いなく対応しているということです。
もちろん、スマホやタブレットなどの再生機器も全てがSBCに対応しています。
すべてのオーディオ再生機器やスマホなどが対応しているので、対応コーデックの組み合わせを考えることなく利用できるのがメリット。
ただ、aptXやAACなどの他のコーデックに比べると、低音質で遅延も大きいため、より高音質で低遅延を求める方には向かないかもしれません。
特に遅延性能に関しては、誰でも体感ではっきりと分かるぐらい遅れが生じます。
SBCは220ms(0.22秒)程度の遅延が生じるのですが、実際に動画を見てみると、話している人の口の動きと音声がはっきりとズレているのがわかります。
音楽を聞くだけならなんら問題ありませんが、動画を見たりゲームをする場合は、SBC以外のaptXやAACなどのコーデックにも対応しているワイヤレスイヤホンを選ぶようにしましょう。
音楽を聞くだけでそこまで高音質を求めないよという方はSBCのみ対応のワイヤレスイヤホンでも大丈夫です。
AAC【iPhone・iPadが対応】
AACはiPhoneやiPadで採用されている高音質・低遅延コーデックです。
SBCに比べ、より高音質で低遅延なのが特徴。
遅延に関しては120ms(0.12秒)とSBCの半分ほどなので、動画視聴やゲームに適しています。
音質に関しても、SBCよりも高い圧縮効率を実現しているため、より高音質で楽しむことが可能です。
そしてiPhoneやiPadはAACが最も高音質・低遅延のコーデックとなっています。
なのでiPhoneやiPadと接続する場合は対応コーデックがAACとなっていることを最低条件にワイヤレスイヤホンを選んでみると良いでしょう。
一方でAndroidスマホの場合はAAC対応はほとんどなく、次に紹介するaptXが標準搭載の高音質・低遅延コーデックとなります。
aptX【Androidスマホ標準の高音質コーデック】
SBCはもとより、AACよりもさらに高音質・低遅延なコーデックがaptX。
ほぼすべてのAndroidスマホに搭載されており、実質的にAndroidスマホ標準搭載の高音質・低遅延コーデックとなっています。
aptXはSBCとAACとはそもそも圧縮方式が大きく異なり、それが高音質・低遅延につながっています。
SBCとAACはヒトには聞こえないと言われる高音域の音をカットした上で圧縮し、データ量を半分にまで削減しています。
一方でaptXは高音をカットすることなくすべての音域を圧縮し、それでいてデータ量を75%も削減することができるのです。
そのためSBCやAACよりも元の音源に近い高音質で音楽を再生できます。
遅延に関してもデータ量が少ないため、70ms(0,07秒)程度と非常に短く、動画やゲームプレイも快適に行うことができるのです。
Androidスマホであればほぼすべてが対応しているコーデックなので、Androidユーザの方はaptX対応を目安にワイヤレスイヤホンを選ぶと良いでしょう。
aptX HD【aptXの高音質版・ハイレゾ対応】
aptXの高音質バージョンがaptX HDというコーデックです。
aptXをベースに、ビットレートを352Kbpsから576Kbpsに、サンプリング周波数と量子ビットを48KHz/16 bitから48KHz/24bitに向上させています。
これによりハイレゾ音源の再生にも対応しているのが特徴です。
ただ高音質化させた分、遅延がaptXの70msから130msになっていることには注意が必要。
とは言えSBCよりは遅延が少なく、AACとほぼ同等なため、ハイレゾ対応の高音質と低遅延を非常に高次元で両立しているコーデックと言えます。
aptX LL【aptXの低遅延版・動画やゲーム向け】
aotX LLはaptXをさらに低遅延化させたコーデックです。
LLは「Low Latencry(低遅延)」の頭文字をとっています。
遅延性能が40ms(0.04秒)とaptXの半分程度にまで少なくなり、すべてのBluetoothコーデックの中で圧倒的に低遅延なのが最大の特徴です。
なのでゲームをプレイする方、特に音ゲーをプレイする方には最もおすすめなBluetoothコーデックと言えます。
ただ音質はaptXよりも劣ると言われているので、少し音質を犠牲にしてでも超低遅延を求めている方向けのBluetoothコーデックです。
aptX adaptive【通信状況に応じてビットレートを可変】
通信状況、音楽の再生状況に応じて自動でビットレートを可変してくれるコーデックがaptX adaptiveです。
aptXの中でも最も最新のBluetoothコーデック。
ビットレートを260Kbps~640Kbpsの間で随時可変することで、安定した通信と超低遅延、そしてハイレゾ級の高音質を両立しています。
遅延は50ms~80msと、aptXと同等かそれ以下に抑えながらも、最大96Kbps/24bitのサンプリング周波数にも対応しているという、まさに次世代の高音質・低遅延Bluetoothコーデックです。
今現在のBluetoothコーデックの中で、最も高い次元で高音質と低遅延を両立しているコーデックと言えますね。
ただ今のところ(2020年5月現在)、aptX adaptiveに対応したワイヤレスイヤホンはほとんど無い状態ですし、スマホ側も一部のハイエンド機のみが対応している状態なので、普及するまでにはまだ時間がかかりそうです。
LDAC【ソニーの超高音質コーデック】
ソニーが開発した超高音質コーデックです。
ビットレートが最高で990Kbps、サンプリング周波数が96KHz/24bitなので、音質という面においては向かうところ敵なしの最強の高音質を誇っています。
ただし990Kbpsのビットレート時は、遅延が1000ms(1秒)ほどと言われており、動画視聴やゲームには全く向いていません。
まさしく超高音質に特化したBluetoothコーデックと言えます。
また990Kbpsで音楽を再生するのは、相当通信環境が良くないと厳しいと言われているので、実際には990Kbpsで再生できることはほとんど無いかもしれません。
LDAC対応のスマホとしては、ソニーのXperiaはもちろん、Android8.0以降のスマホであれば対応している機種がいくつか存在します。
LDAC対応のワイヤレスイヤホンは、aptXほどではないものの数が多いので選択枠が豊富なもが嬉しいポイント。
Samsung Scalable Codec【Galaxyが対応している高音質コーデック】
サムスンが開発し、GalaxyスマホとワイヤレスイヤホンのGalaxy Budsが対応しているBluetoothコーデックです。
具体的なビットレートや遅延性能はわかりませんが、Galaxyシリーズ同士での接続であればかなりの高音質・低遅延で音声データを送信できます。
ただしGalaxyスマホやGalaxy BudsなどGalaxy製品しか対応していないので、スマホとワイヤレスイヤホンの両方をGalaxyシリーズで揃える必要があるのがデメリットです。
HWA【Huaweiが開発した高音質コーデック】
Huaweiが開発した、ハイレゾ対応の高音質コーデック。
ハイレゾ対応という点ではaptX HDとaptX adaptive、LDACと同じですが、ビットレートが最大900Kbps、サンプリング周波数が96KHz/24bitまで出るので、LDACに次ぐ超高音質コーデックと言えます。
LDACには音質面では一歩及ばないものの、遅延の少なさではLDACよりも優れています。
ただし、Huawei製のスマホやワイヤレスイヤホンでしか対応していないコーデックですし、今後も普及する見込みが無いので、あまりおすすめできません。
現在のところHuawei製のスマホとワイヤレスイヤホンで揃えられる人以外には、全く恩恵が無いと言ってよいでしょう。
aptX Voice【音声通話用コーデック】
音声通信用のBluetoothコーデックです。
ワイヤレスイヤホンやBluetoothヘッドセットでクリアな音声で通話するために開発されました。
VoLTEに対応したスマホにaptX Voice対応のワイヤレスイヤホンを接続することで、これまでに無いほどクリアな音声通話を実現することが可能です。
どれほどクリアかは実際に試して見ないとわかりませんが、スマホでVoLTE回線を利用して通話した時に匹敵するほどクリアな通話がハンズフリーで行えることが期待できるとのこと。
今のところaptX Voiceに対応したワイヤレスイヤホンは出てきていないので、これからの登場を楽しみに待ちましょう。
ワイヤレスイヤホンとスマホの両方が同じコーデックに対応していることが必須
Bluetoothのコーデックはスマホとワイヤレスイヤホンの両方が同じコーデックに対応していなければ機能しません。
スマホなどの送信デバイスでコーデックに基づいて音声データを圧縮し、ワイヤレスイヤホン側でも同じコーデックで解凍することで音楽が再生されからです。
たとえば、スマホでaptXで音声データを圧縮したら、ワイヤレスイヤホンでもaptXで解凍しなければならないのです。
そのため必ずスマホとワイヤレスイヤホンの両方が同じコーデックに対応している必要があります。
コーデックは両方が対応している、より高音質のものに自動的に合わせられる
もしスマホとワイヤレスイヤホンの両方が「SBC」と「aptX」という2つのコーデックに対応していたとします。
この場合は、より高音質のコーデックであるaptXで自動的に接続されるのです。
他にもスマホとワイヤレスイヤホンの両方が「SBC」「aptx」「aptX HD」の3つに対応している場合は、最も高音質のaptX HDで双方が接続されます。
上記のように自動的により高音質のコーデックで接続されるのは、Bluetooth側の仕様なので変更できません。
またスマホは「SBC」のみ、ワイヤレスイヤホンは「SBC」と「aptX」に対応している場合は、両方が共通で対応している「SBC」で接続されます。
Androidスマホで対応コーデックを確認する方法
こうなると自分の持っているスマホがどのコーデックに対応しているかが気になりますよね。
先程も説明したように、iPhone・iPadはAAC、多くのAndroidスマホはaptXに対応しています。
なので基本的には自分の持っている機種に応じて、AACかaptX対応のワイヤレスイヤホンを購入すれば問題ありません。
とは言えAndroidスマホの場合は、aptX以外にaptX HDやaptX LL、LDACなどにも対応していることもあります。
そこでAndroidスマホがどのコーデックに対応しているかを確認する方法を解説します。
Bluetoothの対応コーデックを確認するには、最初にスマホの「開発者向けオプション」という項目を開放しなければいけません。
「設定」→「システム」→「端末情報」と進み「ビルド番号」を連続で7回タップすることで、「開発者向けオプション」が有効化されます。
後は設定から、「システム」→「開発者向けオプション」→「Bluetoothのオーディオコーデック」と進むことで対応コーデックを確認可能です。
もし「Bluetoothのオーディオコーデック」がタップできない場合は、ワイヤレスイヤホンをスマホに接続してから試して見てください。
WindowsとMacはaptXに対応している
実は、すべてのWindows10 PCとMacは両方ともaptXのコーデックに対応しています。
なのでaptX対応のワイヤレスイヤホンを選ぶことで、より高音質・低遅延で音楽や動画を楽しむことが可能です。
さらに言うと、Windows 7や8のPCを10にアップデートするだけでも、aptXが利用できるようになります。
なのでWindows 7や8を利用している方は、Windows10にアップデートしてみてください。
Bluetoothのコーデックはワイヤレスイヤホン選びで必須
最後に、Bluetoothのコーデックについてまとめます。
- Bluetoothのコーデックは音声データの圧縮方法
- 各コーデックは音声データの「圧縮効率」「遅延」「音質」に違いあり。
- SBCはすべてのワイヤレスイヤホンが対応
- 低遅延で選ぶなら、「aptX LL」か「apt X」「aptX adaptive」
- 高音質で選ぶなら「LDAC」か「aptX HD」
- iPhoneなら「AAC」、Androidスマホなら「aptX」対応が基本。
- GalaxyやHuaweiのスマホでは、独自コーデックがある。
- スマホなど送信機器とワイヤレスイヤホンなどの受信機器が同じコーデックに対応していることが必須。
- 対応コーデックが複数ある場合は、より高音質のコーデックに自動接続される。
iPhoneなら必ずAACに、AndroidスマホもほぼすべてがaptXに対応しています。
なのでAACかaptX対応を基準にすることで失敗しないワイヤレスイヤホン選びにつなげることが可能です!
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