最近、何かと話題のIoT
インターネットと通信技術の発達によりAIスピーカーや照明、家電、家全体など身の回りのあらゆるものがインターネットにつながるようになりました。さらに次世代通信5Gの登場により、今後は一層インターネットに接続されるデバイスが増え、生活に身近なものになることでしょう。
しかし、まだ「IoTの実態が良くわからない」「生活にどのような影響があるかを知りたい」という人も多いのではないでしょうか。そしてIoTをより理解するためには実際の活用事例を参考にすると分かりやすいでしょう。
そこで今回はIoTとは何かから、IoTの最新活用事例を分野別に紹介していきます。
関連記事
IoTの医療・介護での活用事例[医療介護産業はこう変わる] – WebHack
IoTとは
IoTは「Internet of Things」の略で、日本語で「モノのインターネット」と言います。これまではインターネットに接続されるのは、パソコンや携帯電話などの通信機器がほとんどでした。しかし、最近はスピーカーや照明、各種家電、自動車、腕時計、街中の信号機など身の回りのあらゆるものがインターネットに繋がるようになりました。
上の画像のようににあらゆるモノがインターネットにつながることからモノのインターネット、「IoT(Internet of Things)」と呼貼られているわけです。
そして、IoTによりモノがインターネットに接続されることで、これまでは不可能であった遠隔からの操作や管理、情報収集、分析、人工知能への活用などが可能になります。さらに、工業、農業、医療、運輸などあらゆる分野での応用が期待でき、我々の社会や生活をより便利に快適に変える非常に大きな可能性を秘めた今、注目の最新技術です。
IoTの市場規模
IoTは現在最も注目される技術の1つであるため、調査会社IDC によると2019年の世界のIoT市場規模は7450億ドル(約81兆円)と予測されています。2018年の6460億ドルから15.4%の上昇と2桁の成長です。さらに2022年までこの2桁成長は続くと予測されており、2022年にはIoT市場規模は1兆ドル(約108兆円)に達すると予測されているのです。
業種別に見ると、2019年にIoTへの支出額が最も大きい業種は、
組立製造で1190億ドル(約13兆円)、
用途別にみると、2019年に支出額が最も大きいと予測されているのは、
製造オペレーションで1000億ドル(10.8兆円)
となっています。やはり製造分野での活用が進んでいるようです。
2022年までの年平均成長率という観点で見ると、最も高い業種は保険で17.1%、次に中央官庁で16.1%、医療で15.4%と予測されています。
そして、スマートホームなどの個人のIoT消費は2019年には1080億ドル(約11.8兆円)に達し、全体で2番目に大きい産業分野になると予測されています。
また、IDCJapanによると国内のIoT市場規模は2019年は7.3兆円、その後は年平均13.3%で成長し、2023年には11.8兆円に達すると予測されています。
このようにIoTは今後、高い成長率を保ちながらビジネスから日常生活まであらゆる分野において普及し、活用されていくことでしょう。
家(スマートホーム)でのIoT活用事例8選
失くした物をすぐに見つける「MAMORIO」
家の中などで無くしたものを簡単に発見することができるのが「MAMORIO」です。超薄型で小型のデバイスを無くしたくないもの、たとえばカギや財布などに取り付けたり入れて置きます。MAMORIOが手元から離れると連携させておいたスマホにいつどこで失くしたかを通知してくれるのです。
他にも、手元から離れたMAMORIOと他のユーザーがすれ違うと場所を知らせてくれる「みんなでさがす」機能や駅や街に設置されているMAMORIO SpotにMAMORIOが届くと通知してくれる機能があります。
カギや財布などをよく紛失してしまう人におすすめのIoT製品となっています。
スマホで照明を管理「PHILIPS Hue」
「PHILIPS Hue」はスマートフォンやタブレットで照明をコントロールすることができるPHILIPS LIGHTING社 が提供しているIoT製品です。
ライトのON/OFFだけではなく、明るさや照明の色などもスマホからコントロールすることができます。映画を見る、食事をするなど雰囲気やムードに合わせて手軽に照明を変化させることができます。また、外出先からスマホで照明をつけることで防犯に役立てたり、指定した時間に自動的にライトをONにしたりするような使い方も可能です。
さらにNetflixと連携することで、見る映画に合わせて自動的に照明を変化させ、適した雰囲気を作り出すなんてこともできるなど、非常に多機能なIoT照明となっています。
スマホで玄関を開閉「August Smart Lock」
家の玄関をIoT化できるのが「August Smart Lock」です。専用の製品をドアのカギ部分に設置することでスマホからの開閉はもちろん、誰がいつ出入りしたかという入出の記録をつけたり、家族や友達などに一時的にスマホで使えるスペアキーを渡すことも可能です。
住人の好みを学習し自動で温度調整「Nest Thermostat」
家の室温を調整してくれるサーモスタット。 「Nest Thermostat」はそんなサーモスタットをIoTで進化させた、家の室温管理をしてくれるIoT製品です。
温度センサーが搭載されたNest Thermostat とエアコンやヒーターなどの家電を連携させることで自動で室温を調整してくれます。さらにNest Thermostatのすごいところは搭載されている独自の人工知能が住人の起床時間や帰宅時間を学習し、季節の変化も考慮に入れて、住人それぞれに最適な室温に調整してくれることです。
やはり、同じ家に住んでいる家族でも起床・帰宅時間は異なりますし、好みも違うので、それぞれに最適な室温に自動調整してくれるのは非常にありがたいですね。
また、家に人がいなくなると自動でエアコンをOFFにしてくれる省エネ機能を搭載されています。
家中のスイッチをコントロール「マイクロボット・プッシュ」
「マイクロボット・プッシュ」は家中にある、様々なスイッチをスマホからコントロールすることができるIoT製品です。
取り付けも簡単で、ライトやその他の家電のスイッチの上にに両面テープで貼り付けるだけで、スマホからスイッチをコントロールすることができるようになります。
わざわざスイッチを押しに行くのがめんどくさい時や、外出先から照明をつけたい時はもちろん、体が不自由な人にとっても非常に便利なIoT製品です。
空気清浄機を自動制御「Blueair Aware」
室内の空気の汚れ具合をリアルタイムで計測し、スマホから状態を確認することができるのが「Blueair Aware」です。
空気の汚れ具合に応じて、自分で空気清浄機をつけたり、換気したりすることもできますが、Blueairが出している専用の空気清浄機と連携すれば、空気の状態に応じて自動的に空気をきれいにしてくれます。
地震時に自動点灯するIoTLEDライト「MAmoria it」
地震で停電が起きたときに頼りになるのが「MAmoria it 」IoTLEDライトです。震度4以上の地震が起きると自動点灯するのいで、すぐに場所を把握することができますし、持ち上げて懐中電灯として使うことができます。
日本は地震が多いので「MAmoria it 」 のような地震時に役立つIoTを活用した製品がもっと出て来てほしいですね。
スマホから冷蔵庫の中身を確認できる「FridgeCam」
「FridgeCam」は冷蔵庫の中を独自のトラッキング機能で自動的に認識し、映像をスマホから確認することができるIoT小型カメラです。
リアルタイムの映像をどこでも確認できるので、買い物をする時に「あの食材、冷蔵庫にあったけ?」と悩むこともなくなりますし、冷蔵庫の食材を無駄にする事なく使っていくことができます。
自動車でのIoT活用事例4選
日立のリモートパーキングシステム
「リモートパーキングシステム」はスマホからの遠隔操作で車を駐車することができるIoTを活用したシステムです。スマホからの遠隔操作以外に自動駐車も可能で、障害物をセンサーで検知することができます。
ドライバーの健康状態をリアルタイム計測し事故を減らす「hitoe」
NTTグループとソフトウェアを手がけるSAP が開発している「hitoe」は体に身につけ、ドライバーの健康状態を把握することで事故を未然に防ぐことができるIoTデバイスです。
心拍数、心理的安定度、中枢性疲労度(脳の疲労度)の測定結果を基に、ドライバーの疲労感や緊張度などの健康状態を把握します。
自動車の走行データを記録する「mojio」
「mojio」は自動車に端末を取り付けることで、様々な走行データを計測し記録していくことができるIoTデバイスです。
記録したデータを分析することで、目的地までの道のりを教えてくれたり、点検や修理が必要かなどの自動車の状態がわかるようになったり、 位置情報をリアルタイムに把握できるなど、自動車のあらゆる情報を効率的に収集することができます。
運行データをリアルタイムで発信「京都市交通局」
京都市交通局はバスの待ち時間に関する不満を解消するためにIoTシステムを導入しようとしています。バスは電車と違い予定時刻になってもバスが到着しないということは多く、不満が多いです。
そこで京都市交通局は、バスに発信機を搭載し、運行データをリアルタイムで発信する仕組みを導入しているのです。リアルタイムの運行情報はバス停に設置させたアナログフリップで受診し、乗客はフリップを見るだけで、自分が乗ろうとしているバスが今どこにいるのかを確認できるという優れものです。
医療・ヘルスケア分野でのIoT活用事例4選
家で診察を受けられる遠隔医療サービス「PlushCare」
「PlushCare」は、自宅でスマホを利用することで医者の診療を受けられる遠隔診療サービスです。現在診療を受けられるのは、緊急性の低い風邪などの症状のみですが、体調が悪い時にわざわざ病院に行って待合室で待つ必要がないのが非常に嬉しいところです。 また、医師を選ぶこともできます。
現在、サービスを受けられるのはまだアメリカの18の州のみですが、遠隔医療は日本国内でも一部の病院が行っていますし、高齢者が増えている日本においては需要が高いはずなので、今後日本でも同様のサービスが普及するでしょう。
歯磨きを分析して最適な磨き方を提案「G・U・MPLAY」
「G・U・MPLAY」 は歯ブラシに装着し、いつも通り磨くことで磨き方を分析して、最適な磨き方を提案してくれるIoT製品です。
本体には加速度センサーやLED、Bluetoothが搭載されており、スマホと連携することで改善された磨き方を確認することができます。また、ゲームなどオリジナルのコンテンツも用意されているので子供が楽しんで歯磨きすることができるのも特徴です。歯磨きしないときは、そのまま歯ブラシスタンドとしても使えます。
愛犬の体調データを管理する「FitBank」
FitBarkは愛犬のペットにウェアラブルデバイスを装着することで消費カロリーや睡眠具合などの体調データ取得し、愛犬の健康管理ができるIoTサービスです。
現在、既に100ヶ国以上、200種類以上の犬種のデータが取得されており、犬種ごとに最適な健康管理をすることができます。
着るだけで心拍と呼吸を計測できる「HEXOSKIN」
「HEXOSKIN」はTシャツのように身につけることができるIoT心拍呼吸測定デバイスです。シャツを着用するだけで心拍数や呼吸の数、肺活量など測ることができます。
「HEXOSKIN」 の良いところは通常の衣類として着用できることで、日常生活はもちろん、運動時や睡眠時なども、丸一日リアルタイムで心拍や呼吸を測定できるのです。そして取得された各種健康データはクラウド上で管理・分析され、日々の健康管理を支援してくれます。
農業分野でのIoT活用事例4選
ヤンマーのスマートアシスト
農作機械の管理にもIoTは活用されています。
ヤンマーの「スマートアシスト」は、農作機械にセンサーを取り付け、情報を収集することで、効率的な農業を実現しようとするものです。収集される情報としては、作物に関する情報はもちろん、農作機械の位置情報や稼働状況も含まれており、盗難や機械の不具合をいち早く検知し、すぐに通知してくれます。
遠隔で農作物の状態確認「ベジタリア」
「ベジタリア」は、畑にセンサーを設置することで、農場に行くことなく、スマホやタブレットで作物の状態を確認できるIoTを活用したサービスです。センサーとしてCO2や土壌の温度などを測定できるモニタリングシステムが設置され、蓄積された様々なデータを解析することで、作物の生育状態を遠隔で確認することができます。
遠隔で管理することで、育ちの悪いエリアを優先的に回れるので、作業の効率化が図られ、生産コストを下げることができます。
室内で育てるスマート家庭菜園「foop」
「foop(フープ)」 自宅などの室内でレタスやミニトマト、ミントなど15cm以下の小さい野菜を効率的に育てることができるIoTデバイスです。効率的な栽培のために5つものセンサーが搭載されており野菜の発育環境を最適な状態に保ってくれます。また野菜が食べごろになるとスマホに通知してくれる機能もあるので、新鮮な野菜を食べるのにも役立ちます。
取り付けられているセンサーは以下の5つです。
- 照度センサー:部屋の明るさを検知する
- 温度湿度センサー:温度・湿度に応じて環境調整ファンを稼働する
- 水位センサー:水位を調整する
- ドアセンサー:アクリルカバーの開閉状態を通知する
- CO2センサー:空気中のCO2濃度を測定する
農業ノウハウの継承
現在深刻な問題となっている農業の人手不足もIoT技術を活用することで解決できるかもしれません。人手不足の原因の一つとして、農業ノウハウの継承が難しいことが挙げられます。
そこでIoTを活用し、職人が作った作物の状態や畑の環境などを数値化されたデータとして蓄積します。蓄積されたデータは客観的に確認することができますし、人工知能で分析してノウハウをこれまでよりも簡単に後継者にフィードバックすることが可能になるでしょう。
また、美味しい野菜などがどのようにして育ったのかを分析することで、高い品質の作物を育てるのにも役立ちます。
ノウハウの継承は農業だけではなく、製造業や修理分野など様々な技術者の間で問題となっています。そのため、IoTを活用したノウハウのフィードバックが今後は重要になっていくでしょう。
製造業でのIoT活用事例2選
工場のデータをリアルタイムに可視化し生産性を上げるFUJITSU「Intelligence Dashboard」
製造業もIoT活用の主戦場です。
FUJITSUは、各地にある工場のデータをインターネットで繋ぎ、可視化し一括管理することで生産性向上や品質の向上を目指すシステム「Inteligent Dashboard 」を提供しています。 Inteligent Dashboard では、工場に取り付けられた各種センサーからの情報をFUJITSUが独自開発した解析ソフト でリアルタイムに解析し、モニターで確認できるようになっています。
Inteligent Dashboard を導入して、生産性向上や品質の向上を実現しているのが上海のエレクトロニクス企業「INESA」です。Inteligent Dashboardで工場の生産ラインの様々なデータや映像をリアルタイムで一括管理し可視化できるようになったことで、問題の対処や改善の質・スピードがあがり、製品品質と生産性の向上を実現しています。
コマツのIoTで機械を管理
建設・鉱山機械メーカー の小松制作所では IoTを活用して、世界中で稼働・休止している建設機械の状態を把握するIoTシステムを提供しています。
このシステムを活用することで、どこにある、どのような機械が故障しているのか、メンテナンスが必要なのかを把握し、すぐに対処できるようになります。
また、どの地域でどのような機械の需要があるかも把握できるので、コマツ自身の営業戦略でも大きな役割を担っているようです。
スマートシティでのIoT活用4選
マンホールで都市型水害の被害を防ぐ「明電マンホールアンテナ」
IoTをまちづくりに活用する方法の1つとして、明電舎は都市の浸水を未然に防ぐためのマンホール型IoTデバイス「明電マンホールアンテナ」の提供しています。
マンホールに取り付けられた水位センサーとガスセンサーからのデータを基に、豪雨による都市浸水をいち早く検知し被害を未然に防ぐことが期待されます。近年は豪雨被害が日本各地で頻発しているため、このマンホール型IoTデバイスが一刻も早く全国に設置され、豪雨被害が少しでも減ることが望まれます。
どの駅のトイレが開いているかがわかる「IoTトイレ」
国内の受託開発の大手・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、トイレの空き状況がわかるIoTトイレを開発しています。スマホで駅やビル内のトイレの空き状況をリアルタイムに確認することができ、「ギリギリの状態でトイレに行ったらすべて埋まっていた」なんて事態を防ぐことができます。
みなさんも電車の中や街を歩いている時にお腹が痛くなって、いざトイレに行ったら埋まっていて困ったという経験はあると思います。なのですぐにでも全国に普及してほしいIoTサービスですね。
駐車場の空き情報を教えてくれてる「Streetline」
StreetLineは、街なかの駐車場の空き状況をリアルタイムに教えてくれるIoTサービスです。アプリも出されていますが、対象地域はまだアメリカの一部都市の2万弱の駐車場で、日本はまだ未対応なのが残念なところです。
駐車場を探すのが面倒と感じる方も多いでしょうし、特に都市部やイベント時に駐車場を探すのはとても大変なので、先程のIoTトイレと同様にすぐにでも日本で普及してほしいIoTサービスです。
ゴミの蓄積状態がリアルタイムにわかるスマートゴミ箱「BigBelly Solar」
「BigBelly Solar」は ゴミの蓄積情報をリアルタイムに知ることができるスマートゴミ箱です。 BigBelly Solar によりゴミの収集頻度やルートなどを最適化することでゴミ収集にかかるコストを削減することが期待されています。
さらに BigBelly Solar は太陽光発電のエネルギーを活用して動いていおり、エコにも気が配られているのも素晴らしい特徴です。
IoTの活用はこれからが本番
今回は現在、活用されているIoTの事例を26個紹介しましたが、実際にはもっともっと多くのことに活用されています。今後5Gが普及すれば、IoTの活用の幅はさらに拡大していくことになるはずです。
今回の記事では紹介しませんでしたが、GoogleHomeやアマゾンEchoのようなスマートスピーカーもIoT活用の一種であり、最も身近な事例です。今は生活の中心はスマートフォンですが、今後は音声による操作が中心になると言われており、音声でどんな物でも操作できるようになります。
さらにIoTが生活からビジネスまで社会全体に浸透し、真のIoT社会が実現すれば、音声などで人がわざわざ操作する必要すらなくなり、人の行動に合わせて機械が自動で制御し行動してくれるそんな夢のような時代になっていくことでしょう。
関連記事