IoTは「Internet of things」、日本語でモノのインターネットの略。スマホやパソコンなどの情報機器だけではなく、
- 腕時計
- テレビ
- エアコンなどの白物家電
- 工場
- 自動車
など身の回りのあらゆるモノがインターネットに繋がる、さらにはモノ同士が繋がり合うのが特徴です。
モノがインターネットに繋がることで、遠隔から監視・操作したり、モノ同士が通信しあうことで人間なしでも機械を制御することが可能になります。これまでは困難だったことができるようになったり、人間が長時間かけていた手間のかかる作業が自動化できるなど非常に多くのメリットが考えられています。
そのためIoTはあらゆる分野での活用が予想されていますが、中でも少子高齢化が進む日本においては、需要が急増する一方で人手不足が深刻な医療や介護での活用に大きな期待が寄せられているのです。
そこで今回は、医療と介護分野におけるioT活用の重要性と具体的な活用事例、どのように医療と介護現場が変わるのかを紹介していきます。
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医療や介護産業でioTの活用が重要な理由
医療と介護分野でのIoTの活用が重要な最大の理由は深刻な人手不足です。特に介護現場では、過酷な業務内容から一旦仕事に着いてもすぐに離職してしまう人が多いのです。介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると介護職員の離職率は
- 正規職員で14.3%
- 非正規で20.6%
という非常に高い水準にあります。
人手不足により、たとえ施設に入っても十分なケアを受けれなかったり、施設自体が倒産してしまう場合も少なくありません。
倒産により施設自体が不足していることで、 7割以上の人が入居での介護を受けたくても在宅介護を選ばざるおえない状況になっており、被介護者はもちろん介護者にかかる肉体的・精神的負担が高くなっています。少子高齢化が進む日本では今後この割合はさらに増加するはずです。
そこでIoTを活用し、入居者・介護者の負担を減らしつつ、少人数でも効率的に十分なケアできるような体制を構築することが重要なのです。
また、医療現場では人手不足はもちろんですが、地方と都市での医療格差が深刻な問題となっています。
病院や医師の数が多い都会では病院に通院しての治療は受けやすい。しかし、地方ではそもそも病院の数が少なく通院が困難だったり、入院したくても在宅治療を余儀なくされている人も少なくありません。
在宅治療だと患者の状態をリアルタイムに把握し、いざという時にすぐに医師が駆けつけることが困難です。
さらに通院であれば医療費を安く抑えられますが、近くに病院が無く在宅も難しいことから、遠くの病院に入院せざるおえず、医療費が必要以上に高騰してしまうなどの問題もあります。
また、少子高齢化による人手不足で医師や看護師が足りない中、医療を必要とする患者の数は増えています。このままでは十分なレベルの医療サービスを提供し続けるのは困難です。
そのため、日本中の人に十分な医療を届けつつも、必要以上に医療費が高騰してしまうことを防ぐことが重要です。
そこでIoTを活用し、患者の医療データや健康情報を一元管理し、 場所や時間にも制約されない医療サービスを少人数でも効率的に提供することが求められているのです。
[介護でのioT活用事例] IoTで排せつ介助を助ける「DFree」
先程も話したように、介護業界では深刻な人手不足に悩まされています。その原因は過酷な業務内容ですが、特に排せつ介助は最も負担の大きい業務の1つです。
一人一人排せつタイミングや介護レベルが異なることに加え、対応が遅れると被介護者の身体的・肉体的負担も高めてしまいます。そのため、排せつ介助は優先度が高く、他の業務を圧迫しがちです。
そこでIoTを活用し負担の大きい排せつ介助を助けてくれるのがウェアラブルデバイス「DFree」です。
「DFree」 はトリプル・ダブリュー・ジャパンが開発したウェアラブルデバイスで、専用のデバイスを下腹部に装着し、超音波センサーによって排尿や排せつのタイミングを予測しスマホなどに通知してくれます。
介護者のスマホに「何%溜まっており、何分後にトイレの時間です」という具合で通知がくるのです。事前に排せつのタイミングを知れるので、適切なタイミングでトイレに誘導したり、オムツを交換できることはもちろん、一定時間のごとのトイレ誘導業務なども不要になります。
そのため介護者の負担を軽減しつつ、業務の効率化にも繋がるというわけです。もちろん被介護者の負担も軽減できます。
[介護でのIoT活用事例] 被介護者のベットでの様子をリアルタイムで把握「ベッド見守り支援ソリューション」
「ベッド見守り支援ソリューション」はNECネッツエスアイが提供している被介護者のベッドでの様子をリアルタイムに把握し通知してくれるIoTを活用したサービス です。
ベッドに取り付けられたIoTセンサーから被介護者のバイタルや体重情報など各種情報を取得し、「見守りクラウド」という専用クラウドに送信・蓄積します。蓄積された情報は介護者の端末へ送信される仕組みです。
被介護者の状態を把握したり、適切なケアプランを作成するのに役立てられるため、被介護者・介護者の両方の負担が軽減できるわけです。
その他のIoTを活用した在宅介護を支援するサービスとして、
- エアコンにセンサーを取り付け、睡眠状態や活動量を把握できる「スマートエアコン」
- 被介護者の買い物や散歩を補助する「アシストカート」
などがあります。
このようにIoTを使用頻度の高い身の回りのモノに活用することで、被介護者の生活を邪魔することなく、これまでは難しかった24時間の見守りを実現する取り組みが進んでいます。
[介護でのIoT活用事例] 生活音を活用した見守りサービス
近年の日本では、
- 定期的に介護者が家に訪れる「訪問型のサービス」
- カメラやセンサーなどにより異常を検知したら家に駆けつける(あるいは親族などに通知する)「センサー型サービス」
- GPS情報を活用し位置情報を常に把握しておくサービス
など色々な見守りサービスが登場しています。
しかし、カメラやセンサー、GPSなどの見守りサービスは利用者の個人情報が筒抜けとなり、プライバシー的に問題があります。
そこで最新のIoT技術を活用し、プライバシー問題を克服した見守りサービスが登場しています。それがIoT機器を使い被介護者の足音やドアの開閉音、家電製品の使用音といった様々な「生活音」を集め、AIで解析し、通知するというものです。
具体的には、富士通が「リモートケアベース」というIoT機器を活用して生活音や転倒音、咳やいびきの音などを収集・解析し、異常があれば介護者や管理者などに通知する見守りサービスを提供しています。
こうすることで、プライバシーを保ちつつも、なにか異常があればすぐに駆けつけたり、電話で確認するなど質の高い見守りサービスが提供できるのです。
また、呼吸音や咳の音を収集することで、介護者の健康状態も把握でき、病気の早期発見に役立てることもできます。
[医療でのIoT活用事例] IoTでオンラインの遠隔医療を実現
2015年8月に厚生労働省が「遠隔診療」を解禁したことで、多数の民間企業がIoTを活用した遠隔診療サービスを提供開始しています。
様々なサービスがありますが、中でもスマホやタブレットなどの身近なIoT機器にアプリをインストールし、遠隔診療するスタイルが手軽なことから注目を集めています。
オプティムとMRTは「PoketDocter」いうスマホやタブレットを利用したテレビ電話で診療が行えるアプリを提供しています。スマホで予約から診療、クレジットカードでの決済まで行え、診断後に処方箋や薬を郵送してもらうことも可能です。
また、体温計や血圧計、体組成計などから取得した健康データをPoketDocterのアプリで病院と共有できる機能も備わっています。
便利な遠隔診療ですが、医師や患者になりすまして個人情報を盗むなどの悪質な問題が発生しています。対策として、指紋や静脈から個人を特定する「生体認証技術」の活用がありますが、診断の正確性などから対面診断の方が現時点では安心でしょう。
今後はIoTを活用し、
- 診断の正確性をどう向上させていくか
- 患者に安心感を与えられるか
などが遠隔診療の普及のカギになりそうです。
[医療でのioT活用事例] ioTでスマートホスピタルを実現
スマートホスピタルとは
- センサー
- スマートフォン
- タブレット
- ウェアラブルデバイス
などあらゆるIoTデバイスを活用し、病院と患者、家庭をクラウドで結びつけて健康データや医療データを一元管理することです。
スマートホスピタルのメリットは2つあります。
1つは、様々な医療機関に保存されている患者のデータをクラウドで共有し一元管理できることです。バラバラに保存されていた医療データを共有し合うことで、たとえかかりつけではない病院や診療科でも、最新の診療データと組み合わせつつ常に最適な治療方法を提案することができます。
特に高齢者の場合は、複数の病院や診療科で診断を受けている可能性が高いので、病院や診療科ごとに医療データを共有し一元管理することは非常にメリットが大きいでしょう。
2つ目はウェアラブルなどのIoTデバイスによって患者の
- 血圧
- 体温
- 脈拍
などをリアルタイムに把握し、記録・集約できること。患者のリアルタイムの健康データを収集することで、より精度の高い治療を提供することができます。
また、病院の医師や看護師もウェアラブルデバイスなどのIoT機器を活用することで患者に異常があってもすぐに駆けつけ対応するなど、少人数でも効率的な治療と病院経営ができるのです。
[医療でのioT活用事例] IoTで医療の見える化と手術の効率アップ
医療でのIoT活用ではすでに疾患を持っている患者だけではなく、健康な人も自分の健康状態を把握し、病気予防に向けて一人一人が取り組む「予防医療」と病気の早期発見早期治療を目指すの取り組みが進んでいます。
スマートフォンやウェアラブルデバイスなどの身近なIoTデバイスで日頃から自分の健康状態を可視化して把握する。そのデータを医療機関とも共有し、分析してもらうことで、専門的なアドバイスを受けて食生活を見直したり、適切なタイミングでの受診など病気の予防と早期発見治療に役立てるサービスが登場しています。
医療の手術現場では、IoTを活用した「スマート治療室」の導入が始まっています。スマート治療室ではIoTテクノロジーを活用して手術室にある各種医療機器や設備を相互に接続・連携することで、 手術の進行状況や患者の状態をリアルタイムに可視化し医師やスタッフと共有します。それにより手術の効率と精度を大きく向上させるものです。
実際に、東京女子医科大学にスマート治療室「SCOT」が導入されており、 手術スキルを向上させることで医療事故を減少させたり、より効率化することに繋げています。
医療・介護でのioT活用における課題と対策
医療・介護でのIoTの活用は、便利で大きなメリットをもたらす一方、最もプライバシーが守られべき患者の医療データをサイバー攻撃や情報漏えい・不正利用からどのように守るかが大きな課題です。
近年、患者の医療データを電子化してインターネットを介し複数の病院で共有できる「電子カルテ」が日本でも普及しています。「電子カルテ」には患者の
- 性別
- 年齢
- 身長
- 体重
- 治療記録
- 保険情報
など多数の個人情報が含まれており、 それらを標的にした病院へのサイバー攻撃が増えてているのです。
もし、電子カルテの情報が漏洩したり不正に改ざんされれば多大な被害をもたらすことは間違いありません。今後、IoTの活用が進むことでこのようなサイバー攻撃のリスクは確実に高まっていきます。
そこで病院へのサイバー攻撃を防ぐために、セキュリティシステムの導入はもちろん、
- IoTで接続されている全ての医療機器の管理徹底
- 病院スタッフのセキュリティリテラシーの向上
- サイバー攻撃に対する日頃からの対応方法の周知
などが重要です。
そして医療機関、病院スタッフ一人一人がセキュリティに関する意識を高め、対策を行っていくことが医療・介護でのIoT活用には必要になってきます。
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