2019年5月8日(現地時間7日)毎年恒例、Googleの開発者向け会議「Google I/O 2019」の基調講演がアメリカ・サンフランシスコ・マウンテンビューの野外会場で開催されました。
Google I/Oでは毎年、最新バージョンのAndroid OSについ詳しく発表される他、近年ではGoogleアシスタントに代表されるAI(人工知能)を駆使した様々なテクノロジーやARプラットホーム「ACore」など最先端技術の集大成として大きな注目を集めています。
今回は、テーマが「Building a more helpful Google for everyone(すべての人々のためにより役立つGoogleを構築する)」でした。そのためAIを活用したものからそうでないものまで、世界中の人々が手軽に利用でき、役立つようなサービスの発表が目立ちました。さらに低価格Pixelやスマートディスプレイなどのハードウェアの発表もありました。
期待されていたストリーミングゲームサービス「STADIA」の詳細や、VR(Daydream)、自動運転(Waymo)には触れられませんでしたが、今年も盛りだくさんの内容でした!
それでは、Google I/O 2019で発表されたもの・ことを紹介していきます。
Google I/O 2019で発表された最新技術・機能
Android Qこと「Android 10」ダークテーマや5G 対応
Aondroid Qとしてベータ版が配信されている次期AndroidOSが「Android10」として発表され、新機能が紹介されました。
まず、「ダークテーマ」に対応することで目に優しくなり消費電力の面でも有利になります。手動での切り替えと省電力時の自動切り替えが利用できます。そして、「5G」と「折りたたみスマホ」にもOSレベルで対応します。5Gはまさに今年のトレンドの1つですし、サムスンの「Galaxy Fold」のように折りたたみスマホも盛り上がりを見せているためこのタイミングでの対応は納得できます。OSレベルでの対応により端末メーカーはいちからUIを作り込む必要がなくなります。
昨年のGoogleI/Oで発表された「Digital Wellbeing」(デジタルによる幸福)の機能のひとつとして「Focus Mode(フォーカスモード)」が追加されました。「Focus Mode(フォーカスモード)」はオフにしたいアプリの一覧を作ると、モードをオンにしている間はアプリが表示されなくなります。ついつい無意識にアプリを開いてしまうことを防ぐことができます。
他に、インターネットに接続していないオフラインの状態でも、スマホ上で音声認識を行い動画に自動で字幕をつける「Live Caption」機能、送られてきたメッセージに対してAIが短めの返信文を自動作成してくれる「スマートリプライ」、メッセージの文脈に基づいて適切なアプリを表示する「Suggested Actions」などの新機能が発表されました。
また、Android Qではプライバシーの強化にも重点が置かれています。たとえば現在地情報の共有を個々のアプリごとに「常に許可する/アプリの使用中のみ許可する/拒否する」の3つから選んで、承認状況を簡単に確認することができるようになります。
他に、アプリの外部ストレージ(microSDなど)へのアクセス方法の変更、Wi-Fi接続時にMACアドレス(ネットワーク機器固有のID)を仮想化する機能なども追加されました。
家族向けの新機能として、親が子供のスマートフォン使用を制限できるペアレンタルコントロール機能も発表されました。
このようにAndroid Qはスマホをより便利に使用するための機能に加え、「Digital Wellbeing」(デジタルによる幸福)を実現するためのスマホ使用制限機能や「5G」「折りたたみ」など最新のスマホトレンドへの対応が特徴になっています。
3DでのAR表示可能な「Google検索」
Google検索での検索結果から動物や人体などの画像を3D化し、AR表示で現実世界に表示できる機能がGoogle検索に追加されます。
実際にI/Oではホウジロザメを検索して、出てきた画像をタップすると、3D化された画像が表示され、さらにタップすると、現実世界に実物大でAR表示されるデモが行われました。
検索結果を視覚的に実物大で確認できるため、非常に便利な機能と言えるでしょう。
この機能は5月中に順次追加されていくことになっています。
Google Lensにおすすめピックアップ機能
2017年のGoogle I/O で発表された「Google Lens」にも新機能が追加されました。レストランでメニューにGoogle Lensを向けると自動で文字を認識し、おすすめ商品をハイライト表示してくれます。
さらにハイライトされた商品をタップすると画像やレビューを参照することが可能です。他にも請求書やレシートをスマホで写すとチップを自動で計算してくれる機能も発表されました。
また、Google Lensによる翻訳機能やテキストの読み取り機能の対応言語が日本語を含む100カ国語以上に拡大し、廉価版端末向けの軽量版検索アプリ「Google Go」でもGoogle Lensを利用したテキスとの翻訳や音声読み上げが可能になるなど、より多くの人々がAIを利用した便利な生活を実現できるような取り組みが行なわれています。
ブラウザで利用できる「Duplex」
Google I/O 2018 で発表されたGoogleアシスタントがレストランなどの電話予約を代行してくれるサービス「Duplex」がWeb上でも利用できるようになりました。
「レンタカーを出張のために利用したい」とGoogleアシスタントに伝えるとカレンダーやメールの情報から現地のレンタカー店を特定して、必要情報を自動入力し、オススメの車種を提示してくれます。そして最後に人間がオプションの選択などを行うだけでレンタカーの予約が完了してしまいます。
この機能がすごいのはサイト側でシステムの変更をする必要がなく、どんな予約サイトでもGoogleアシスタントによる半自動での操作ができることです。
軽量で10倍速い「次世代Googleアシスタント」
これまでのGoogleアシスタントは音声認識のAIモデルに100GBの容量を必要としていました。しかし、次世代Googleアシスタントではこれがわずか0.5GBまで軽量化されました。なんと、「99.5%」オフです。
これにより、Googleアシスタントの音声認識処理がデバイス上で行えるようになり、最大10倍処理が高速化され、アシスタントとの会話はほとんどラグなしで瞬間的に行えるようになりました。
デモでは最初に「OK Google」と言うだけで次々と処理を行う様子が披露されました。また、個人情報に基づいて最適な返事をするパーソナライズドヘルプや車載向けの「Android Auto」での新機能なども発表されました。
次世代Googleアシスタントは、今年後半発売予定の次期Pixel端末から利用可能になる見込みです。
Googleマップに履歴を残さない「シークレットモード」
ChromeブラウザとYoutubeでGoogleアカウント上に履歴を残さずに閲覧できる「シークレットモード」がGoogleマップでも利用できるようになりました。
シークレットモードを利用して検索された目的地やナビゲーションの情報はGoogleアカウント上には保存されません。
Google I/O 2019で発表された最新ガジェット
日本でも発売!低価格スマホ「Pixel3a」「Pixel3aXL」
以前から噂されていた通り、GoogleはPixel3の廉価版となる「Pixel3a」「Pixel3a XL」を発表しました。価格がPixel3aが5.6インチで399ドル、Pixel3a XLが6.0インチで479ドルと約半額にまで価格が下げられました。
価格を下げるために、SoCがSnapdragon 845からSnapdragon 670に、ストレージが64GB、背面がガラスではなくポリカーボネート、ワイヤレス充電なし、専用画像処理プロセッサーが非搭載、前面カメラが1つとなっています。
カメラ性能に関しては専用画像処理プロセッサーが非搭載ですが、ソフトウェア処理で補っており、Pixel3同等の高画質な写真を撮れるとしています。
またステレオスピーカーや側面を握って操作するアクティビティエッジなどもそのまま搭載されています。さらにPixel3には無いイヤホンジャックが搭載されるなどのユーザーに嬉しいポイントもあります。
「Pixel3a」「Pixel3a XL」は日本でも発売されることが決まっており、価格はPixel3aが4万8600円~、Pixel3a XLが6万円~でGoogle Storeから予約購入できます。
「Pixel3a」「Pixel3a XL」 の購入はこちら: Google Store
「Nest Hub」と「Nest Hub Max」の2つのスマートディスプレイ
Googleは去年の2月にNestを自社のハードウェアチームに統合しました。
今回の基調講演ではMade by Google製品を今後Nestブランドにまとめていくことを発表し、去年の10月に発表された「Google Home Hub」を「Nest Hub」に改名して、日本でも発売されることが決まりました。価格は129ドル(約1万4000円)です。
さらに「Nest Hub」の上位モデルとして新たに「Nest Hub Max」も発表されました。画面サイズが「Nest Hub」より3インチ大きい10インチで、画面上部にカメラが搭載されています。プライバイー関連の配慮として、背面にカメラとマイクをオフにするスイッチも搭載されています。価格は229ドルでアメリカ、イギリス、オーストラリアで発売されます。残念ながら日本での発売予定はありません。
社会と人々のための「Google AI」の取り組み
Googleは「AI for evreyone」(AIをすべての人に) を掲げて様々な分野でAIを活用する取り組みを発表しました。
発話困難な人のための「Project Euphonia」
これまでの音声認識AIは基本的に発話されたデータを取り込んで学習していましたが、発声することが困難な人の音声や表情、喉や口の動きなどもAIが学習して、その人それぞれに適した発話・発声AIをトレーニングし、コミュニケーションを支援するのが「Project Euphonia」(プロジェクト ユーフォニア)です。
実際に発話困難な人がGoogleのAIを活用して、コミュニケーションをとる様子がYoutubeで公開されています。
文字で通話できる「Live Relay」
発話・発声が困難な人向けに通話を支援するのが「Live Relay」です。相手の音声をテキストに変換して表示し、文字入力か提案された返信文で返信すると、Googleアシスタントが音声変換して相手に通話してくれます。
医療府現場での活用
AIを医療で活用する取り組みも進められており、今回はEUで目に関する病気を診断するAIが認可を取得し、さらにAI診断を肺がんに活用することができることを発表しました。
病気は早く発見すればするほど治る可能性が高まりますし、肺がんは世界で最も死亡者数が多い病気であるため、AI診断による早期発見が大きな効果をもたらすでしょう。
洪水を予測してアラートを出す
インドで衛生画像から作成した3Dの地形データと気象データを活用した物理シミュレーションによってどの地域が洪水に見舞われてしまうかを特定し、事前にスマホ向けにアラートを出す取り組みが行なわれています。
まとめ
今回のGoogle I/Oは「AIをすべての人に」そして「より多くの人に役立つ Google を構築する」ことを掲げ、世界中の多くの人々のニーズに応える技術やサービス、取り組みが多数発表されました。
単に生活を便利にするだけではなく、人々の人生を変えてしまうそんな可能性を感じさせてくれる基調講演でした。